リボンの騎士 ザ・ミュージカル


於:新宿コマ劇場
つごう5回目の観覧。
千秋楽を前に総括してみたい。


とにかく私たちはこの1ヶ月、『リボンの騎士』に夢中になった。
これまで、正直1回見れば十分だったハロプロミュージカルとは一線を画していたどころか、次元が違うとすら感じられた。
全てにおいて新しくそして大きな挑戦であり、演じる側も見る側も少なからず不安を抱えてのスタートであったと思う。
しかし出演メンバーはこの難題を見事に克服してみせ、我々の想像を遥かに絶する、珠玉とも言うべき作品を作り上げてきたのである。
まずその真剣勝負の姿に心打たれ、そしてこの「魂の物語」の虜となった私たちは、幾度となくコマ劇場に足を運ぶことになる。


今年3月『娘DOKYU!』で放送されたこのミュージカルの配役発表の席で、脚本・演出の木村信司氏は「一人ひとりの顔が見えるように書いた」と述べているが、その言葉に偽りはなかった。
配役はまさに適材適所。我々モーヲタの眼から見てもそれぞれがぴたりと役にはまっており、なぜこれほどまでに「部外者」である木村氏がハロプロを理解できるのか?と驚いた。
この舞台のために行われたオーディションというのがどのようなものであったかは知る由もないが、木村氏の役者を見る目の確かさにはただ敬服するばかりだ。


さてここで改めて讃えたいのが、主演・高橋愛の功績である。
この舞台ではとかく主人公以外のキャラクターが注目を集めることも多かった。
魔女ヘケート・藤本美貴の好演は鑑賞したほとんどすべての人に驚きを持って賞賛されていたし、もちろん相手役のフランツ王子についてもそのキャスティングの妙も含めて盛んに語られた。
大臣とその息子。家臣ナイロン。牢番たち。二人の騎士。タレント・スカウト。そして王と王妃。
それぞれの印象が強烈に胸に残る。しかしそれも、中心にサファイアという難役をさもそれが当たり前であるかのように演じ切って見せた高橋愛の存在があってこそだ。
そればかりか、回を重ねるごとに高橋の演技は着実に成熟していった。
この日の観覧は私自身少し時間が開いてのものだったが予想に違わぬ進歩を見て取り、心から喜ばしく思った(おかまサファイアエスカレートぶりにも驚いたがw)。
そしてその姿こそ、「モーニング娘。のマザーシップ」と呼ぶにふさわしいものであると確信した。
この1ヶ月で得た自信を胸に、どうかこれからもモーニング娘。を力強く引っ張り続けて欲しいと願う。


近年、私たちはハロプロヲタを続けながらも、どこかフラストレーションを溜め込むようなところがあった。
この女の子達のポテンシャルはこんなものじゃないのに―――
もっとすごいものを作れるはずなのに―――
そうしたモヤモヤを一気に振り払ってくれたのが『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』である。
この作品で私たちは彼女らが内包していた底力の物凄さに驚嘆し、その輝きに満ちた姿を誇らしく思った。
妥協が皆無であったとは思わないが、少なくともこれを見れば今の彼女らの力がわかる、そういう作品に仕上がった。
だからこそヲタ以外のなるべくたくさんの人々に見て欲しいと思ったし、そうした人々の「正直舐めてかかっていたけど、よかった!」という反応を見つけては心を躍らせた。
だがここまでのものを作ってしまったがゆえに、果たして今後これを超える仕事ができるのだろうかという不安もよぎる。
ハロプロミュージカル史上、いやハロプロの全活動史上最高傑作との呼び声も高いこの作品が、「部外者」の手によって作り上げられたという事実。
再び「つんく♂プロデュース」の旗の下に戻ったとき、この最高の素材がどう料理されるかについては、我々の目もより厳しくなるのは当然のことである。
願わくば、この高く上がったハードルを彼女たちが軽やかにクリアーし続けてくれることを。