名古屋の夜。他の面々はどこへやら消えてゆき、つかの間の休息。
車の屋根をたたく雨音…「ちょっとサウナ行ってくる」「ん?ああ…(えっ?いいなぁ…)」…持参したサッカーボールで遊んでいる音…
そんなものが記憶に残っている。都合4時間ちょっとは眠っただろうか…


とりあえず出発。とにかくさっさと高速乗って、
チャーっと帰ろうということになったのだが…
名古屋高速に乗ったまではいいが、どうも進むべき道がわからない。
しばらく走ると「東名阪道」への分岐が現れた。
「東名」の文字に反応してそちらへと向かった。しかし、何やら雲行きが…
料金所にぶつかり、500円取られる。「ん…???」
東名阪道」は「東名高速」とは別の有料道路だったのだ。
過ちを犯していることに気づき、心中はパニック状態の私。
しかし同乗者4名は眠りについている。いや、起きていたとしても、
この状況を把握できるものはいないだろう…それが救いと言えなくもなかった。
「どうする?一旦どこかで有料道路を降りるか、いや、しかし…」
そんな逡巡をしている私の前に、運命の分岐が現れた。
一方は、四日市。一方は、清洲
四日市は知ってる…清洲ってどこだ!?…でも、四日市は三重。
三重は、愛知より西。行きたいのは、東!ええい、清洲だああぁぁぁ」



判断は正しかった。しばらく走ると名古屋に戻り、今度は正真正銘、東名高速の料金所にたどりついた。
「よかった…」こんな大ピンチを意にも介さず、眠りこける同乗者たち。
白々と明け始めた空の下、シビックは愛知県を後にする。
ハンドルを握る私を元気付けてくれたのは、すぐそばにいる生身の人間ではなく、
スピーカーから流れるメロン記念日の歌声だった。


――― 名古屋の章 完 ―――